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東京高等裁判所 昭和60年(行ケ)200号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1 本願発明の概観

成立に争いのない甲第二号証の一(本件願書)、二(本件出願の昭和五八年一二月一九日付け手続補正書)及び三(同昭和五九年九月七日付け手続補正書)によると、

<1> 本願発明は、「硫黄の製造方法の改良、特にクラウス法として知られている硫黄の製造方法の改良に関するものである」(本件願書添付の本願明細書(以下「本願当初明細書」という。)の発明の詳細な説明第三頁第一二行ないし第一四行)こと、

<2> クラウス法では、硫化水素含有ガスを、燃焼ゾーンで空気により硫化水素と二酸化硫黄とを含有するガスにした後(二酸化硫黄含有残渣ガス等の添加により二酸化硫黄を含有させる改良法もある)、温度を二〇〇~四〇〇℃に維持した数基の転化器からなる接触酸化ゾーンへ導入して、そのガス中の硫化水素を、反応式

<省略>

で示されるようにして、硫黄にまで酸化させるが、その転化器内において、触媒として活性アルミナ、ボーキサイト等のような酸化物をも用いることにより良好な結果が得られる(同第三頁第一八行ないし第五頁第七行参照)、こと、

<3> しかしながら、「この方法の欠点は、処理すべきガスの中に酸素が存在した場合、これらの触媒はこの酸素によつて非常に大きな影響を受ける点である。つまり、クラウス法においては、転化器内に導入したガス中に少量でも酸素が存在していると、触媒として使用しているアルミナの活性が時間がたつにつれて規則的に低下していくことがわかつているのである。このため、充填している触媒は度々取り換える必要が生じてくるのであつて、これにより、クラウス装置内における触媒活性の低下を防止すると同時に、この活性低下によつて引き起こされると思われる大気汚染の増大も防止しているのである」(同第五頁第七行ないし第一九行)こと、

<4> そこで、本願発明は、「新規な触媒の組合せ処理によつて、クラウス触媒が有する酸素に対する過敏性という欠点を克服しようとするものであつて、処理すべきガス中に時として存在する酸素から、硫黄製造用の通常の触媒を保護すること」(同第六頁第一五行ないし第一九行)を目的とし、この目的を達成するため、「まず、処理すべきガスをして、通常のクラウス触媒上でクラウス反応を行わせしめる前に、該処理すべきガスを脱酸素(中略)触媒床内に通してやることから成る。(中略)換言すれば、本新規方法においては、処理すべきガスがクラウス転化器内に入つてくると、まず最初に、適当な厚さを有する脱酸素触媒床と接することになるのであつて、実際のクラウス触媒床内に入る前にこの脱酸素触媒床を該ガスが通過することが必須要件になつている」(同第七頁第三行ないし第一八行)構成を含む、前記本願発明の要旨とする構成を採択したこと、

<5> 本願発明はこの構成を採択したことにより、「例えば約五〇〇〇vpmといつた量の酸素が処理すべきガスに含まれる場合であつても、時間の経過に従つて硫黄の製造効率が低下してくることはない」(同第七頁第一九行ないし第八頁第二行)、「この新規な組合せによつて予想を越えた顕著な効果が奏せられ、従来からのクラウス法が有していた欠点を解決する(後略)」(同第九頁第一四行ないし第一六行)、「この脱酸素触媒は、それ自体が、反応(1)に対してある程度の活性を有しているので、その効果は倍加してくる。つまり、該触媒は、酸素を除去することによつて従来の触媒を保護するのみでなく、2H2S+SO2混合物から転換によつて元素状の硫黄を更に一部生成せしめるのである」(同第一一頁第九行ないし第一四行)といつた作用効果を奏するものであることが認められる。

2 引用例記載の発明の概観

(1) 成立に争いのない甲第三号証(引用例)によると、

引用例記載の発明は、「種々の気体イオウ化合物を含有する廃ガスの接触的処理方法に関する」(引用例の明細書の項第一頁左下欄下から第二行ないし第一行)ものであること、

従来、硫黄化合物を含む気体混合物の精製によつて多量の硫黄が回収できることが知られており、この精製、回収は一般に周知のクラウスの反応により行われるが、この反応を利用する「工業的気体混合物の精製およびイオウの回収についての装置の効率はやがて低下し、(中略)この効率の低下は、屡々活性アルミナを含みかつ最初の精製段階において使用される触媒の、硫酸化に関係するものと思われる。この硫酸化は通常には進行性であつて被処理ガス中の痕跡の酸素の存在によつて生ずるものであるが、(中略)このような硫酸化はクラウスの反応の効率を低下させるのみでなく、存在するその他の気体イオウ化合物の加水分解による分解反応の効率をも低下させる」(同第二頁右上欄第一行ないし第一六行)ものであること、

そこで、引用例記載の発明は、「硫化水素を高度に含有し、そしておそらく二硫化水素および二硫化カルボニルのような加水分解可能な気体イオウ誘導体類を含有する廃ガスを二〇〇℃以上の温度において接触的処理をし、かつその効率が最後まで減少しない方法を完成した」(同第二頁右下欄第七行ないし第一二行)ものであることが認められる。

(2) そして、引用例に、審決認定のとおりの事項、すなわち、硫化水素、亜硫酸ガス及び加水分解し得る硫黄化合物を含有する廃ガスを、少なくとも一五〇m2/gの比表面積を有する活性アルミナの担体にモリブデン、コバルト、ニツケル、鉄及びウランより成る群から選択された一種又はそれ以上の金属の酸化物、硫化物、又は硫化することができる化合物を含有する触媒上に二〇〇℃以上の温度において通して処理すること、その際の接触時間は例えば三~八秒とすること、触媒担体である活性アルミナの細孔容積は少なくとも〇・二cm3/gであり、アルミナに対する金属の量が一~一五重量%であること、及び試験の際触媒として新しいものと硫酸化状態としたものを使用したことが記載されていることについては、原告も、認めて争わないところである。

(3) 引用例記載の発明に関する以上の事項によれば、引用例記載の発明において、その被処理ガスである廃ガスは、一つの触媒床を用いる右の構成(審決が認定した処理工程)そのもの、すなわち、一つの接触段階のみで処理されるものであることが明らかであり、また、前掲甲第三号証によると、「新しい状態においてはこれら触媒は実際に高度の活性を有し、(中略)これら触媒が偶然的に高度に硫酸化された場合においても(中略)それら触媒は最初の活性を実質上保持している」(引用例第三頁左上欄第九行ないし第一四行)という作用効果を奏することが認められるから、引用例記載の発明においては、被処理ガスに含まれる酸素に関し、これを脱酸素するというものではなく、この酸素の有無にかかわらず、所期の作用効果を奏する触媒を用いる点に特徴があるものというべきである。

そして、前掲甲第三号証によつて認められる引用例記載の発明における実施例に関する記載をみると、その全部が右触媒を用いる一つの接触段階のみで完結しており、各実施例において、硫黄の収量をも表すρSO2率のデータが示されていることからも、右の点が明らかである。

3 技術的思想の相違

本願発明は、1で判示したとおり、まず、被処理ガスを脱酸素触媒床に通して脱酸素し、次いで、クラウス反応の起こる従来からのクラウス触媒床中を通過させるものであつて、二つの段階により処理し、その第一の段階により脱酸素をし、これにより第二段階におけるクラウス触媒への酸素の影響を排除し、これを保護するようにするものである。これに対し、引用例記載の発明においては、2で判示したとおり、被処理ガスの処理を一つの段階で行うものであり、しかも、クラウス触媒の酸素からの保護についての配慮はないのである。

そうすると、本願発明と引用例記載の発明とは、この点において、技術的思想を異にするものというべきである。

4 相違点(1)の判断について

原告は、相違点(1)について、本願発明と引用例記載の発明は「酸素の含有量において実質的に異なるところがないと認められる。」とした審決の認定、判断は誤りであると主張する。

前掲甲第三号証によると、引用例記載の発明における被処理ガスは、クラウス反応に必要な亜硫酸ガスを含有する廃ガスであり(引用例第二頁右下欄第一二行ないし第一五行)、この亜硫酸ガスは、硫化水素を含む廃ガスが、空気によつて部分的に酸化すること等によりもたらされる(同第二頁左上欄第四行ないし第八行、同頁右下欄第一三行ないし第一四行)ものであることが認められるから、その被処理ガスには通常の不純物量の酸素を含むものというべきである。

そして、本願発明における被処理ガスは、本願発明の要旨にあるとおり、酸素を五〇~五〇〇〇vpm(弁論の全趣旨によると「vpm」とは、通常「ppm」又は「vol ppm」と表示される単位であると認められる。)含むものであるが、前掲甲第二号証の一ないし三によると、本願明細書には、被処理ガスに関し、「H2Sを含有しているガス、及び例えば天然ガスの脱硫又は石油製品の水素脱硫工程から発生したガスを、(中略)空気によつて硫化水素部分が酸化されて硫黄とSO2とになり」(本願当初明細書第三頁第一九行ないし第四頁第四行)、「このH2S及びSO2含有したガスは、H2Sを含んだガスに、硫黄の燃焼、SO2含有残渣ガス等適宜なSO2源を添加して得られたものである。」(同第四頁第一八行ないし第五頁第一行)と記載されていることが認められる。

これらの記載によれば、本願発明での被処理ガスは、引用例記載の発明における前記被処理ガスと同様のものというべきである。また、前掲甲第二号証の一ないし三によつても、そのガスに別途酸素を添加、混入するものであることについての本願明細書上の記載がないことが認められるから、本願発明の要旨で規定している酸素量は、引用例記載の発明での被処理ガスの場合と同じく、ガスに不純物として通常含まれている量であるというべきである。

したがつて、本願発明と引用例記載の発明とは、その被処理ガス中の酸素含有量に関して、実質上異なるところはないものというべきであるし、また、本願発明で、その量的範囲をその要旨として規定したが故に、この量的限定が、引用例記載の発明とは異なつて、別途技術的に意義を持つものとなつたということもできない。

相違点(1)に関する審決の認定、判断については、誤りはない。

5 相違点(2)の判断について

原告は、相違点(2)について、本願発明と引用例記載の発明とは、「同種のガスを同一の触媒に同様な反応条件で通しているのであるから、そこに行われる処理の内容が格別異なることはなく、ただ本願発明では脱酸素の作用に注目しているだけであるから、この点において実質的に異なるところはない。」とした審決の認定、判断は誤りであると主張する。

この点に関し、被告は、酸素は、本願発明においても引用例記載の発明においても、同様に除去すべき不純物であることに変わりはないから、引用例記載の発明の実施例に酸素含有量の記載がなくとも、引用例の明細書の項第二頁のクラウス法の概略を述べた部分に、被処理ガス中に痕跡量の酸素が存在することと、その作用について説明がなされている以上、本願発明及び引用例記載の発明は、ともに、同じ金属含有触媒によつて、同じ組成の被処理ガスが、同じ反応条件下で処理されるものであると主張する。

しかしながら、引用例記載の発明においては、前記2で判示したとおり、被処理ガス中の酸素の有無にもかかわらず所期の作用効果を奏する触媒を用いる点に特徴があるもので、その酸素が除去すべき不純物ではないことも、右2で判示したところから明らかである。また、後記6で判示するとおり、引用例の明細書の項第二頁の記載は、単に従来技術について述べたものにすぎず、引用例記載の発明における技術について述べたものではない(後記6で判示する記載以外の第二頁の記載についても同様であることは、前掲甲第三号証から明らかである。)。

これに対し、本願発明では、被処理ガスを第一段階の脱酸素触媒床に通して脱酸素をし、これにより第二段階の触媒床をなすクラウス触媒を保護するものであるから、本願発明はこの点において、引用例記載の発明と異なるものといわざるを得ない。

したがつて、相違点(2)において、本願発明と引用例記載の発明とは実質的に異なるところはないとした審決の認定、判断は誤りである。

6 相違点(3)の判断について

(1) 審決は、本願発明と引用例記載の発明との間の相違点(3)について、「引用例には、引用例記載の触媒による処理の後に、最終段階として活性アルミナなどの従来のクラウス反応用触媒を使用して処理することが十分に示唆されているものである。」と認定、判断し、被告は、被告の主張3における、引用例の明細書の項の<1>ないし<5>の記載をみれば、引用例記載の発明でも、異種触媒の併用がなされることが明らかであると主張する。

(2) 引用例に、被告主張のとおりの右記載があることは、前掲甲第三号証によつて認められるところ、まず、<1>の記載、すなわち、「高い硫化水素含有量を有する気体混合物の処理は屡々気相中で段階的に行われる」(第二頁左上欄第四行ないし第六行)との記載は、この部分の直前の(クラウス法の)「工業的手段においては」という一般的記載を受けたものであることが、前掲甲第三号証によつて認められる。また、同号証によつて認められる右<1>の記載の前後の記載をみると、その記載内容が、引用例記載の発明との間にどのような関係にあるのか、引用例には何らの説明もないのであるから、<1>の記載は、単に従来技術を述べたものにすぎないというべきである。

(3) 次に、(2)の記載、すなわち、「約一〇〇〇℃の温度に昇温し、空気の噴射によつて部分的に酸化した気体混合物の単なる部分的冷却によつて先ずイオウの大部分を得て;次いで濃縮器の間に置いた接触段階の系列中で気体を処理し;イオウが触媒上に析出するのを防止するために、接触段階中において温度(最初の温度段階よりは低いけれど)を接触段階中の気体の種々のイオウ含有量に相当するイオウの露点以上の温度に保ち;」(同頁左上欄第六行ないし第一四行)との記載は、<1>の記載に続く、「即ち所望量の亜硫酸ガスを得るために」という記載を受けたものであることが、前掲甲第三号証によつて認められる。そうすると、<2>の記載は、このような所望量の亜硫酸ガスを得るための空気による部分的酸化、部分的冷却による硫黄の収得、接触段階における硫黄の析出防止のための温度の保持等についての説明がなされているだけのものであるというべきである。そして、これが引用例記載の発明との間にどのような関係にあるのか、引用例には何らの説明もないことが、前掲甲第三号証によつて認められるから、<2>の記載は、<1>の記載と同じく、単に従来技術を述べたものというほかない。

(4) また、<3>の記載、すなわち、「最終段階のみを低温(生成した水を水蒸気の状態で逃がすために一〇〇℃よりも少し高い温度)において高い活性を有する触媒で操作し」(同頁左上欄第一六行ないし第一九行)の部分は、右<2>の記載に続く、「そしてイオウの最後の痕跡を最大限に回収するために用意されなければならない」という記載を受けたものであることが、前掲甲第三号証によつて認められる。そして、<3>の記載中にある、「高い活性を有する触媒で操作」する最終段階自体、前記<1>の記載中にある「段階的に行われる」最終のものということができるし、前掲甲第三号証によると、<3>の記載は、前記<1>及び<2>の記載に続く従来技術の一環として述べているもので、これが引用例記載の発明との間にどのような関係にあるのか、引用例には何らの説明もないことが認められるから、<3>の記載も、<1>、<2>の記載と同じく、単に従来技術を述べたものというべきである。

(5) <4>の記載、すなわち、「この効率の低下は、屡々活性アルミナを含みかつ最初の精製段階において使用される触媒の、硫酸化に関係するものと思われる。この硫酸化は通常には進行性であつて被処理ガス中の痕跡の酸素の存在によつて生ずるものである」(同頁右上欄第六行ないし第一〇行)との記載は、前記の<1>ないし<3>の記載に続いてある、クラウス反応を利用する装置に関しての、「工業的気体混合物の精製およびイオウの回収について装置の効率はやがて低下し(後略)」(第二頁右上欄第一行ないし第五行)という記載を受けたものであることが、前掲甲第三号証によつて認められる。そして、右のとおり、<4>の記載中にはその触媒の酸素による影響についての説明があるが、これは、その記載にあるとおり、最初の精製段階において使用される触媒への酸素の影響に関して述べたものであるにすぎない。そうすると、<4>の記載は、前記<1>の記載に関連して、従来技術の一環として述べているものというべきであり、また、前掲甲第三号証によると、<4>の記載が引用例記載の発明との間にどのような関係にあるのか、引用例には何らの説明もないことが認められるから、<4>の記載も、<1>の記載と同じく、単に従来技術を述べたものというべきである。

(6) さらに、<5>の記載、すなわち、「このような触媒は装置の最初の段階における他の気体イオウ化合物を完全に分解することを常に可能とし、そしてこのことは最終の低温生成段階を保護する。最終の痕跡の硫化水素の最大量を保持するために最終段階に、高い比表面積を有する活性アルミナをも屡々含有する高性能触媒を使用することができる」(同頁左下欄第一四行ないし第二〇行)における、「このことは最終の低温生成段階を保護する。(中略)最終段階に、高い比表面積を有する活性アルミナをも屡々含有する高性能触媒を使用することができる」との記載は、<3>の記載の場合と同じく、<1>における「段階的」の最終の段階であると認められる。そして、<5>中の「保護」が、その段階の何の何に対する「保護」であるのか、右記載から判明しないし、また、この<5>の記載内容が、引用例記載の発明との間にどのような関係にあるのかについて、引用例には何らの説明もないことが、前掲甲第三号証によつて認められるから、これも、単に従来技術を述べたものというべきである。

(7) 以上みたところからすると、引用例の<1>ないし<5>の記載からしても、異種触媒の併用がなされることが明らかであるということはできないし、また、この点が示唆されているということもできない。

7 作用効果について

前掲甲第二号証の一ないし三によると、本願発明の実施例では、「七〇〇時間操作した後の硫黄の収率は六〇・一%であつた」(実施例一。本願当初明細書第一四頁第一二行ないし第一三行)こと、「四〇〇時間操作した後の反応器内での硫黄の収率は、やはり七五・三%となつた」(実施例二。同第一七頁第八行ないし第九行)こと、「三五〇時間操作した後の反応器内での硫黄の収率は、やはり七四・七%であつた」(実施例三。同第一八頁第一二行ないし第一三行)こと、クラウス触媒であるアルミナ触媒床のみによる処理では、被処理ガス中に存在する八〇〇vpmの酸素によつて一三サイクル後には収率が約八四%にまで低下してしまうのに対し、脱酸素触媒床を併用した場合には二三サイクル後も収率は依然として九四%を保つている(実施例四。同第二二頁第一行ないし第八行)こと等の作用効果が得られるものであることが認められる。

これに対して、前掲甲第三号証によつて認められる引用例記載の発明の実施例における、ρSO2率(硫黄の収量をも表すという)等の作用効果を示すデータは、そのいずれもが、本願発明とは異なる、一つの触媒床を用いる一つの接触段階のみにより得られたものであり、クラウス触媒の寿命についての記載ではないことが認められる。

したがつて、本願発明と引用例記載の発明の作用効果は、同じく硫黄の収率に関するものではあつても、それぞれ別異の構成により得られたものであり、本願発明の作用効果は、引用例記載の発明からは予測し得たものではないというべきである。

被告は、本願発明と引用例記載の発明の、被処理ガスと触媒との接触時間及び操業時間が同じである点について触れるが、この点も、右に判示したところを左右するものではない。

8 まとめ

以上判示したところによると、審決は、本願発明と引用例記載の発明との間の相違点(2)、(3)についての判断を誤り、本願発明の奏する作用効果を看過、誤認し、ひいて、誤つて本願発明の進歩性を否定したものというべきであるから、違法であつて取消しを免れない。

三 よつて、審決の取消しを求める原告の本訴請求は正当としてこれを認容する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

アルミナ及び/又はシリカ担体上にFe、Ni、Co、Cu及びZnからなる群より選択される少なくとも一種の金属の化合物を固定させてなる脱酸素触媒―該担体は、その比表面積が少なくとも一〇〇m2/g、その細孔の容積が〇・二〇ml/g以上であり、そして、該担体上に固定された金属化合物の量が、該脱酸素触媒の重量に対する金属重量の比率として表わした場合、〇・五~一〇%―の床中をH2S、SO2及び五〇~五〇〇〇vpmのO2を含有するガスが該脱酸素触媒と〇・一~三秒NTPの時間接触するように通過させることにより脱酸素を行い、次いで、クラウス反応の起る従来からのクラウス酸化物触媒床中を通過させること、を特徴とするクラウス反応による硫黄製造の改良方法。

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